コミュニケーション以前に、医学的にも難聴は認知症リスクの最大のものであるらしい。この解説記事(*)が分かりやすい。
*難聴によって認知症を発症する確率は50%も上昇!補聴器のさらなる普及が認知症予防の鍵に
出典:国際アルツハイマー病会議の研究結果を元に作成 |
難聴の人の認知症発症率は1.5倍
紹介されている論文によると、「難聴である人は、10年間のうちに認知症を発症する確率が50%、うつ病になる危険性が40%、転倒する危険性が30%(健聴者より)高い」そうだ。
理由の一つとして、難聴者の脳の萎縮速度が健聴者に比べて早いことがあげられている。「難聴者は、音声言語を処理する脳の機能である『上側』『中側』『下側頭回(かそくとうかい)』における脳萎縮が特に著しい」とのこと。
予防可能な認知症リスクで難聴が最大
2017年の国際アルツハイマー病会議で「認知症リスクの約35%が予防・対策できるものであり、その中でも難聴は最大のリスク因子である」という報告がされた。
最初にあげた図は「予防可能な認知症リスク」を示したものだが、難聴は喫煙やうつ病よりも多く、高齢者では対策しようのない「15歳以下の低教育」を除くと、一番大きいリスクとなっている。
高齢になると難聴になる確率は急激に高まる。65~74歳では18.0%、74歳以上では41.6%だそうだ。なので、難聴になったときの対策が重要になってくる。
日本の補聴器利用率はわずか14%
その基本的な対策が「補聴器」なのだが、2019年1月に発表された日本補聴器工業会の調査結果では、欧米に比べて日本での普及率はきわめて低いようだ。
イギリス48%、フランス41%、ドイツ37%、アメリカ30%に対して、日本の補聴器普及率はわずか14%である。
その原因の一つに補聴器の値段の高さがあるとのこと。軽度(小声や騒がしい場所で苦労する)〜中程度(会話で不自由を感じる)では「公費助成」の対象外となっているのも大きな問題である。
補聴器利用者の満足度も、欧米の70〜80%に対して日本では38%でしかない。機器の精度など技術的な問題なのか、あるいは利用方法の指導などのサポートの問題なのか、いずれにしても国レベルでの関係者の奮起を期待したい。
難聴にならないために
予防として考えられるのは、第一に「大きな音を避けること」だそうだ。数値的には85デシベルを超える音がする場所を避けることが重要になる。騒音は体内に「酸化ストレス」を蓄積させ、正常な細胞組織を壊すとも言われている。
他にも、糖尿病や動脈硬化、脂質異常症などの生活習慣病を防ぐことが大切。生活習慣病は血流に悪影響を与え、内耳や脳の血流不足が聴力低下につながることがある。
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