2026年6月12日金曜日

本『知性の未来』:人間の脳・知性に至る40億年、5つのブレイクスルー、AI、面白い!

内容が濃くやや専門的なので最初はなかなか読み進めないでいたのだが、気がつくと 500ページの内容を堪能しながら面白く読み終わっていた。「知性」や「脳」や「人間」に対する理解が深まったような気がする。

5億5000万年前の(線虫のような)「左右相称動物」が脳を持ち、ニューロンやドーパミンやセロトニンを持ち、感情の原型とも言える「喜び・痛み・満足・ストレス」を持っていたことに新鮮な驚き(と親しみ?)を感じた ♪

📗知性の未来:脳はいかに進化し、AIは何を変えるのか(マックス・ベネット 著、恩蔵絢子 訳)




この壮大な内容の本を解説する力は、私にはとてもないので、出版社の情報ページからコピペさせて戴く。

40億年前にDNAが誕生し、ニューロンが発生して脳になり、やがて人間の脳が言語を発明する……生命の壮大な歴史を、AIの最新の研究成果と比較しながら辿り直し、5つのブレイクスルーが知性を発展させてきたことを解き明かす。そして今、「第6のブレイクスルー」が目前に迫る──。異能のAI起業家が到達した「必然的ビジョン」。



「5つのブレイクスルー」のキーワードを並べてみた。

  1. 操縦によって空間を移動する(情動価ニューロン、ドーパミン、セロトニン、連合学習):左右相称動物(脳を持つ最初の生命体、線虫、「ルンバ」):5億5000万年前:感情の原型(良いものに近づき悪いものから遠ざかる、感情の維持、「喜び・痛み・満足・ストレス」)

  2. 強化学習(試行錯誤による学習〔AI:モデルフリー強化学習〕、パターン認識・空間地図、時間知覚→予測、3D空間知覚):脊椎動物(魚):5億年前:将来の報酬を予測→安堵・失望、好奇心(将来の報酬)、恐怖・興奮

  3. シミュレーション(刺激と行動を頭の中で想像、初期の新皮質(コラム構造)、計画、エピソード記憶、反事実学習、繊細な運動能力):哺乳類(マウスのような):1億年前:反事実の想像→後悔(たられば…)

  4. メンタライジング(=自分自身の心の生成モデルを作る、心の理論=他者の意図や知識を推測する、模倣学習=観察して新しい技術を獲得する、将来の必要性の予測→今の行動、新皮質!):霊長類:3000万〜1000万年前:他者の考え・感情の推測、チンパンジー集団の「政治」

  5. 発話(言語、ラベル付けと文法、原会話(ターン・テイキング)+ジョイント・アテンション(共同注意)、世代を越えて思考を蓄積、道具の作り方等の伝達・伝承、噂話・利他主義・罰or残虐性):人間:(200万年前ホモ・エレクトス出現→50万年前ホモ・サピエンス出現→)10万年前に言語?:他者に対する興味(噂話・質問・協力・友情・信頼・復讐心…)

進化は今も続いている。生命が誕生してから 40億年、太陽が死を迎えるまであと 70億年。「ブレイクスルー 6」はいつ、どのように?著者の予測は「人工超知能」…。


以下、興味を持った箇所をメモ的に書いてみる。私自身の要約と抜書きが混在している。他にも沢山あったのだが、読み返してみて気になったところだけに絞った。


[p.198] 動物実験のラットにレバー押しに必死になるよう仕向けるには、レバーを押す度に餌を出すのではなく「ランダム」に出せばよい(→ギャンブル依存)。Facebook などのフィードもスクロールするとランダムに面白いものを表示することで、ユーザを依存症にするよう設計されている。


[p.232] 知覚の特性:脳がそこにあると「考えたもの」(擬似現実)を知覚する
  1. 充填 filling-in:自動的・無意識に欠けているものを補う
  2. 一度には一つだけ:両義図形で両方を一度に見ることは出来ない
  3. 見ずにはいられない:一つの解釈が与えられるとそれにしか見えなくなる


[p.239] 生成モデル generative model(ヘルムホルツ・マシン)は、独自のデータを生成し、生成されたデータを実際のデータと比較することで世界の物事の認識を学習する。


[p.243] 人間が何かを想像しているとき、新皮質は「生成モード」にある。新皮質で擬似現実を起動させている。


[p.245] 新皮質が環境をシミュレーションすることで、物事が起こる前にそれを予測できるようになる。歩いているとき、足の感覚に注意を払ってないが、穴に足を踏み入れたら(地面の感覚がなかったら)、すぐに気づく。新皮質は歩いていることをシミュレートしており、その結果が感覚データと一致している間は気づかないが予測が間違っていると気づく…。


[p.252-266] 新皮質によるシミュレーション(想像力)による新しい能力
(モデルベース強化学習、世界モデルの構築)
  1. 代理的試行錯誤
  2. 反事実学習
  3. エピソード記憶


[p.327] 「心の理論」theory of mind :相手の意図や知識を推測する能力


[p.364] 運動前野と運動野は、自分の動きをシミュレートするのに必要な脳領域であると同時に、他者の動きをシミュレートしてその動きを理解するのにも必要な領域である。
(ミラーニューロン、他者の動きを見てその技を学ぶ、心の理論)


[p.377] 初期の霊長類は独特の「社会性」を持つだけでなく、「果食性動物」であった。果物中心の食生活では多くの認知的課題が生じる。果物の実る場所・時期や競争率、そこに到達するためのルート(や近くに寝るなどの準備…)、自分の将来の空腹度などなど…。


[p.402] 学習の進化
霊長類はメンタライジングにより他者の実際の行動から学んだが、人類は他者の想像の行動(思考)から学べるようになった。


[p.403] 想像の中で見たものを共有することで、共通の「神話」を形成することができる。神話こそ現代の人類文明の基礎である。お金、神々、企業、国家…(架空の概念)。
(ユヴァル・ハラリ『サピエンス全史』)


[p.404] 言語の力は、その産物(より良い教育、協力、共通の神話)ではなく、世代を超えてアイデア(や知識・概念・思考などのシミュレーション)が伝達され、蓄積され、修正される「過程」(アイデアの進化)にある。
このように移っていくアイデアをリチャード・ドーキンス(『利己的な遺伝子』)は「ミーム」と呼んだ。


[p.409] 蓄積されたアイデアのすべては、もはや一人の人間の脳に収めておけなくなった。この問題に対する応答として4つのことが起こった。
  1. 脳が大きく進化した
  2. 集団内で「専門」を持つようになった
  3. 人口規模が拡大した
  4. 「文字」を発明した


[p.422] 鳥のゲノムに「飛び方」は書かれていない。書かれているのは「ジャンプしよう」「羽ばたこう」「滑空しよう」とする本能である。そして「学習システム」と「カリキュラム」によって雛たちは飛び方を学ぶ。


[p.450] 公共の場で交わされる会話の 70%は噂話。


[p.501](訳者あとがき)
「…年を取って、忘れ物も増え、動作がゆっくりになったり、正確に物事が話せなくなったりしたときでも、そうならなければわからない経験というものがある」
「…進化の歴史を訳してきて、私はむしろ、人間の人生のはじまりから終わりまでの内的な経験というものに、前より一層強い興味を持つことができるようになった」


参考文献(抜粋)

📗善と悪の生物学:何がヒトを動かしているのか(ロバート・M・サポルスキー 著)

📗情動と理性のディープ・ヒストリー:意識の誕生と進化40億年史(ジョセフ・ルドゥー 著)

📗深層学習(Ian Goodfellow、Yoshua Bengio 著)

📗情動はこうして作られる:脳の隠れた働きと構成主義的情動理論(リサ・フェルドマン・バレット 著)

📗「未来」を発明したサル:記憶と予測の人類史(トーマス・スーデンドルフ 著)

📗考える脳 考えるコンピュータ(ジェフ・ホーキンス 著)

📗強化学習 第2版(R. Sutton、A. Barto 著)

📗スーパーインテリジェンス:超絶AIと人類の命運(ニック ボストロム 著)

📗脳は世界をどう見ているのか:知能の謎を解く「1000の脳」理論(ジェフ・ホーキンス 著)

📗チョムスキー言語学講義:言語はいかにして進化したか(ノーム・チョムスキー、ロバート・C・バーウィック 著)


最後に、一番印象に残ったのは「訳者あとがき」の「歳を取ってみないと分からない経験」という部分かもしれない…(^^;)。



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